企業のブランドを一新し、新たな成長を目指すための社名変更プロジェクト。新しい名称が決まり、いざ法務局での商号変更という法的な登記手続きを進める段階になると、経営者や実務担当者の頭を悩ませる一つの疑問が浮かびます。それは「専門家である司法書士に依頼せず、自力で手続きを行うことは可能なのか」という問題です。本コラムでは、社名変更の手続きを自力で行うことはできるのかという疑問にお答えしつつ、専門家に頼まない場合のコスト削減効果と、それに伴う実務上の手間について詳しく比較・解説していきます。
まず結論から申し上げますと、社名変更の登記手続きを自力で行うことは十分に可能です。法律上、必ず司法書士などの専門家に依頼しなければならないという決まりはありません。自力で手続きを行う最大のメリットは、何と言っても目に見えるコストの削減です。登記手続きを司法書士に代行してもらった場合、およそ三万円から五万円程度の専門家報酬が発生します。すべてを自社で完結させればこの報酬額を丸ごとカットすることができ、国に必ず納めなければならない登録免許税の三万円のみで法的手続きを終えることができます。限られた予算の中で社名変更を行いたいスタートアップ企業や小規模事業者にとって、この数万円のコスト削減は非常に魅力的な選択肢に映るでしょう。
しかし、そのコスト削減の裏側には、実務担当者にのしかかる膨大な手間と見えないリスクが潜んでいることを忘れてはいけません。自力で進める場合、まずは他社の商標権を侵害していないかの調査から始まり、会社の憲法である定款の変更手続き、そして厳密な法務用語を用いて株主総会議事録や登記申請書を一から作成する必要があります。インターネット上の雛形を参考に作成したとしても、自社の状況に合わせた適切な書き換えができておらず、ほんの少しの記載漏れや表現の間違いがあるだけで法務局から容赦なく修正を求められます。また、平日の日中に法務局の窓口へ何度も足を運んで修正対応に追われることになれば、担当者の通常業務は完全にストップしてしまいます。
専門家に依頼するか自力で行うかを比較する際、最も重要なのは「見えない人件費」という視点を持つことです。実務担当者が慣れない法律用語と格闘し、書類の作成や役所への往復に何十時間も費やすのであれば、その人件費は削減できたはずの専門家報酬をあっという間に上回ってしまいます。
自力での社名変更は、時間に十分な余裕があり、事務手続きに抵抗がない場合にのみおすすめできる方法です。企業が新しい社名のもとでいち早くビジネスを加速させたいのであれば、数万円のコストを惜しまず専門家の力を借りることが、結果的に最も費用対効果の高い賢明な判断と言えるのではないでしょうか。


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