企業の歴史における大きな節目となる社名変更。新しい名称が決まり、株主総会での決議や必要書類の作成という大きな山場を越えると、いよいよ最終段階である管轄の法務局での商号変更登記の申請手続きが待っています。この厳格な法的手続きにおいて、実務担当者が意外とつまずきやすいのが国へ納める登録免許税の支払い方法、すなわち「収入印紙」の取り扱いです。本コラムでは、法務局での社名変更手続きにおいて必須となる収入印紙の購入方法と、申請書類に貼り付ける際の絶対に知っておくべき注意点について詳しく解説していきます。
社名変更の登記申請を行うためには、登録免許税として一律で三万円を国に納めることが法律で義務付けられています。オンラインシステムを使わずに書類を窓口へ直接提出する場合、この三万円は現金で支払うのではなく、同額の収入印紙を購入して申請書類に貼り付けるという形をとります。ここでまず注意したいのが、三万円分という高額な収入印紙の購入場所です。一般的なコンビニエンスストアでも収入印紙は販売されていますが、そのほとんどが日常的な領収書などに使われる二百円の印紙しか在庫を持っていません。そのため、社名変更に必要な高額の印紙を手に入れるためには、大きな郵便局の窓口へ行くか、あるいは申請先の法務局内に併設されている印紙売り場で購入するのが最も確実で安全なルートとなります。
無事に三万円分の収入印紙を手に入れたら、次はいよいよ申請書類への貼り付け作業に移ります。実は、この貼付作業にこそ実務担当者が陥りやすい最大の落とし穴が潜んでいるのです。収入印紙は、株式会社変更登記申請書の余白部分、あるいは専用の収入印紙貼付台紙と呼ばれる白紙の用紙にしっかりと糊付けします。そしてここで絶対に守らなければならない最大のルールが、貼り付けた収入印紙に決して「割印」や「消印」をしてはならないということです。
日常のビジネス業務において、領収書や契約書に収入印紙を貼る際は、印紙の再利用を防ぐために会社の印鑑やボールペンで消印をするのが一般的な常識となっています。しかし、法務局への登記申請においてはルールが全く異なります。申請書類に貼られた印紙は、法務局の担当官が提出された書類を厳格に審査し、問題なく受理された段階で初めて役所側が専用の印を使って消印を行う決まりになっているのです。もし、実務担当者が良かれと思って事前に会社のハンコで消印をしてしまうと、その印紙はすでに使用済みとみなされ、法務局で受け取ってもらえなくなるという最悪の事態を招いてしまいます。
三万円という高額な印紙を無駄にしないためにも、そして何より急ぎの社名変更スケジュールに致命的な遅れを生じさせないためにも、収入印紙はただしっかりと貼り付けるだけで、絶対にハンコを押さないというルールを強く肝に銘じておきましょう。
社名変更は、こうした手続きの細部にまで気を配ることで初めてスムーズな完了を迎えることができます。正しい実務の知識を持って、新しい企業としての力強い第一歩を確実なものにしてください。


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